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ファミリーオフィス未来通信|NISA資金は国内成長に貢献しているのか

国会で焦点となった「NISA資金の海外流出」問題

 

衆議院予算委員会では、「NISA資金が海外市場に流出し、日本の成長に結びついていないのではないか」という問題をめぐり、与野党で論戦が行われました。

質疑に立った議員は、
NISAやiDeCoは国民の資産形成を目的とした制度であるにもかかわらず、国民の貴重な資金が海外インデックスファンドの購入に偏り、最近は“オルカン、オルカン”と海外投資が流行している。国内の成長に資する資金が不足している現状を是正する視点を持つべきだ」
と懸念を表明。さらに、
「NISAの枠を拡充するとともに、その金融資産が国内成長分野に還流するよう、国内投資枠の設定や国内投資への優遇措置を検討すべきだ」
と提案したと報じられています。

「海外偏重」問題と、国内成長投資の不足という論点

 

実際、「NISA資金の海外偏重」や、「国内の成長投資の不足」という指摘には一定の根拠があります。また、成長分野への集中投資という戦略は、高市政権下でも徐々に打ち出されつつあります。

しかしながら、「国内の成長投資を担う存在が、果たして国民のNISA資金でよいのか」という点には、大いに疑問が残ります。

NISAは「上場株式の流通市場」への投資であり、成長資金ではない

 

現在、NISAで投資対象となるのは上場株式です。制度の趣旨からも、非上場株式をNISA対象に加えることは現実的ではありません。

非上場株へのベンチャー投資であれば発行市場に資金が流入し、企業の直接的な資金調達に寄与します。一方、上場株式への投資は流通市場での売買であり、企業の成長投資に必要な“資金供給”には直接結びつきません。

もちろん、株価上昇により社債発行の調達コストが低下したり、M&A戦略が取りやすくなったりする可能性はあります。また、ストックオプションを保有する経営陣の士気向上につながる側面もあるでしょう。しかし、これらはいずれも成長資金そのものの供給とは別次元の効果にとどまります。

「株式市場に資金を入れれば株価が上がる」は誤解である

 

次に注目したいのは、「市場に資金が入れば株価が上昇する」という単純な因果関係を前提にする誤解です。

アベノミクス期、日銀は2013年から2020年にかけて30兆円を超える日本株ETFを購入しました。短期的な下支え効果はあったものの、長期的な株価押上効果は明確ではありません。むしろ日本株が明確な上昇トレンドに入ったのは、日銀がETF購入を停止した後のことです。

この事実は、流通市場への資金流入が、企業価値や経済成長に直結しないことを端的に示しています。

「日本株投資枠」の課題──政策目的と市場の健全性の乖離

 

以上を踏まえると、「日本株投資枠」をNISAに設けることは、政策として一定の理解可能性はあるものの、市場の健全性や投資家利益の観点からは課題の多い制度と評価せざるを得ません。

・市場構造を強化したいのであれば、
➢企業の生産性向上やガバナンス改革が本筋
・個人の資産形成を促進したいのであれば、
➢制度はシンプルかつ中立的であることが重要

日本株への誘導を目的とした制度変更は、慎重な検討が求められます。

NISAの本来の意義──国民を豊かにし、その豊かさが日本経済を支える

 

最後に、NISA制度の本来の意義を改めて確認したいと思います。
NISAは、国際分散投資を通じて日本人の資産形成を促し、国民一人ひとりを豊かにすることができる制度です。そして、豊かになった国民が消費活動を通じて日本経済に貢献し、その需要が企業の収益や成長を支えていく――この循環こそが、資産形成制度が国全体の成長に資する本質的なメカニズムです。

すなわちNISAとは、
資産運用で個人を豊かにし、その豊かさが消費を通じて企業と国の成長を支える
という構図のもとに設計された制度であるべきです。

日本株への誘導や特定資産の優遇といった制度の複雑化ではなく、長期・積立・国際分散という投資の原則に基づく、シンプルで中立的なNISAこそが、結果として国民の資産形成と日本経済の発展に最も寄与すると考えます。

 


【執筆者紹介】

代田 秀雄(しろた ひでお)

辻・本郷 ファミリーオフィス株式会社 特別顧問
シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズ代表取締役社長
中央大学客員教授(国際公認投資アナリスト)

三菱UFJ信託銀行で年金・資産運用の実務に長年従事。 「オルカン(eMAXIS Slim 全世界株式)」などの普及にも携わり、成人の4人に1人がNISA口座を持つ時代をつくった第一人者の一人。

2025年、シロタ・ウェルス・アンド・ウェルビーイング・アドバイザーズを設立。

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